トヨタの足元から〝旅立ち〟
2年前の5月、はじめて関わったベトナム人研修生たちの実習期間がまもなく終わります。ビザはもう一ヶ月ありますが、会社も仕事が少ないので早く帰ることになり、朝日のOさんと3人で送別の夕食会です。
彼はトヨタ紡織系下請けから別のF社に移動しました。当時の「指針」では企業が不正を行った場合研修生は「帰国指導」で強制帰国させることになっていました。K君たちがあきらめずに訴えたことで、当時の厚労大臣が「責任のない研修生が研修・実習を続けられるようにする」と答弁し、その年の12月に「指針」も改訂されました。
K君はF社で試作品をつくる仕事を任されました。図面をみてつくる仕事で、「精密さが要求される」と言っていました。日本語もしっかりマスターし、私が契約書をもってきてほしいとメールすると
「申し訳ございませんが。いろいろ助けてくれて心から感謝します。今回の細かい事を頼まれて、やれなくて自分が最弱だと思います。言い訳したくないですけれども、実は契約書のコーピーは皆に残されません。そして給料明細書もちゃんと探したんですが、全く無いです。次の明細書はちょうど帰国の日4 月21日にかいしゃの部長からもらいますので、その日送ってきます。」
こんな感じで返事が返ってきました。彼の出身はハノイからさらに離れた田舎で、「ラオスから港に行く道路が作られている」そうです。ためた金で「事業をやりたい」と言っています。
K君に「日本にきて良かったか」聞いたところ「いやなこともあったけど、いい事もあった」といいます。3年間満了まできましたが、手放しで満足とはいかず、いろんな思いがあるようです。
研修生にはいろんな事情があり、それも含めてきちんと研修・実習制度が守られれば、この制度には意味があると思います。それだけに企業と研修生を食い物にするするビジネス組織は許せません。
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コメント
帰国後復職せず事業を行うというK君に疑問を持たないこの記事は、貴団体が研修制度を理解していない証拠であり、研修生が出稼ぎ労働者であることを認めていると受け取れる記事である。研修生を食い物にしている悪徳組織を非難するのは当然だが、日本の制度を悪用して金を稼ぎに来ている外国人を非難する観点がすっぽり抜け落ちている。目先の善悪だけで物事を見る姿勢を改めるべきでは、、。
投稿: 素浪人 | 2009年4月20日 (月) 08時46分
お顔がいい色ですねぇ。
>「いやなこともあったけど、いい事もあった」
帰国後、彼が日本での経験を活かし母国で活躍
される事を祈ります。
投稿: hen | 2009年4月20日 (月) 20時03分
素浪人さんのコメントに対する愛ローレンさんのコメントをずっと待っています。
このまま無視してよい問題ではないと思いますが・・・
投稿: asdf | 2009年4月22日 (水) 14時11分
asdfさま どうも
私は愛労連という組織に属していますので責任をもって答えにくいコメントもあります。その点はご了承ください。
あえてコメントすると
外国人研修制度がその趣旨と離れて単純労働受入の側面を強くしているのは事実だと思います。この制度をどうするかは、今国会で議論されているとおりです。
愛労連としては単純労働の受入についてまだ結論にいたっていません。
そういう制度の問題点・矛盾を前提としつつ、実際日本にきている研修生一人一人については同じ人間として権利の保障は必要だと思います。研修生が「制度を悪用して」いるとは見ていません。
投稿: 愛ローレン | 2009年4月22日 (水) 19時37分