衆院法務委員会発言予定原稿
急きょ法務委員会参考人が認められなかった予定原稿です
愛知県労働組合総連合
議長 榑松佐一
愛知県労働組合総連合(愛労連)議長の榑松です。二年前の技能実習法審議では委員各位にたいへんお世話になりました。皆様の活発な討議で長文の付帯決議をつけていただき、その多くが運用要領に盛り込まれました。たいへんありがとうございました。昨年11月の新法施行から私も技能実習機構に協力させていただき、各国語での母国語相談案内をつくるなど実習生への支援と相談を行ってきました。その経験から今回も発言の機会をいただきました。
(1)「新法」施行以後の実態
私の相談事例でも、昨日公表された失踪者聴取表からも技能実習制度に多くの問題があることはご承知の通りです。新法ができて機構のみなさんがたいへんな努力をしていただいていますが、実習生からの相談と失踪者は増えるばかりです。実習生のなかには自分が新法対応か旧法対応かもわからず、入管と機構でたらい回しにされることもしばしばです。問題が起きてからの監督強化ではとても追いつきません。
失踪者の40%を占める建設業では極端に賃金の少ない月があったり、暴力を受けたという相談が目立ちます。しかし国交省は「実習生にたいする監督権限はない」と言って実習企業への対策を取ろうとしません。
縫製業では残業代が一時間500円とか実費の数倍の家賃を取られている相談が相次いでいます。昨年3月の経産省調査で最低賃金引き上げに見合う工賃の引き上げがあったのはわずか2割です。不正を指摘された経営者は「この10年間、工賃は一円も上がっていない」と話していました。経産省は自主行動計画作成を求めただけで、実態は何も変わっていません。
最初の給料で控除された寮費が母国で契約した寮費よりも一万円高かったので抗議したところ、会社は契約書を手書きで修正し「イヤなら帰国しろ」と言われました。同じ住宅の別の部屋が4.5万円なのに実習生の部屋は4㎡広いだけで10.5万円にしていることがわかりました。しかし労基署は実習生のサインがあるからと指導しませんでした。旧法の実習制度でも新法でも実費を上回る寮費は不正となっています。9月に機構に申告し、10月からは1万円引き下げましたが、過去分については機構の指導はできないと打ち切られました。
この他にも愛労連にはこの二年半で86件の相談があり、新法が施行されてからもその数は減っていません。
私は07年から研修生・実習生の相談をうけ、09年の入管法改正、2016年の技能実習法制定に関わってきました。この経験から新たな外国人受入の入管法改正案について以下のように意見を述べたいと思います。
①審議期間の短さ
2009年の入管法改正では政府は2007年6月22日に「規制改革推進のための3カ年計画」を閣議決定し、そのなかで外国人技能実習制度に関わる法令の整備について、2009年の通常国会までに関係法令を提出するとしました。2009年7月に入管法改正が成立、2010年7月に施行されるまでにも大きな事件が続出し数度の「指針」改正がありました。
さらに2016年の技能実習法制定では4月の通常国会から秋の臨時国会まで6ヶ月もの審議期間を得て成立し、その後も分厚い運用要領の制定にまで相当の時間をかけて関係者の意見聴取を行っています。この間に技能実習生の数は倍増しましたが、それでも今日28万人余りとなっています。
ところが今回の入管法改正案は6月の閣議決定からわずか4ヶ月で法案が示されたのは11月に入ってからです。その法案も大半が各省令で定めるものとなっており、国会での審議が十分できるものではありません。
②届け出制の問題点
技能実習法で許可制になる以前の研修制度では監理団体は届け出制でした。しかしそれでも届け出ることのできる団体は他の制度で定められた非営利組織で一年間の活動実績が必要でした。またオリンピックでの人手不足を理由に期限付きで在留資格が作られた外国人建設就労者の監理団体には認定要件があり、国交省への報告義務があります。
しかし、今改正案の「登録支援機関」には拒否要件以外の届出項目がわずかしかなく、極端に言えば自ら暴力団であると名乗らなければほとんどの組織が届け出ることが可能になります。
③問題の多い団体監理型を上塗り
特定技能では企業の移動の自由が原則認められるとしても支援機関から受けられるのは非自発的な離職に限られます。また日本語が不自由で在留期間に期限のある外国人には住居の移動も困難で実際にはほとんどが支援機関の提供する住居に縛られざるをえません。これでは不正の多い団体監理型が登録支援機関型に変わるだけです。
④技能実習制度3号と特定技能1号
技能実習2号を終了した外国人は試験無しで特定技能になることができます。技能実習3号試験の合格は必要なく、技能移転のための一時帰国も義務付けられていません。
技能実習3号と特定技能1号の技術と日本語水準はどう定められているのか不明です。
⑤日本人と同等?
安倍首相は「日本人と同等の待遇」を繰り返していますが、技能実習制度でも日本人と同等と定められています。これは最低賃金を摘要すると言っているにすぎません。
いっぽう専門的技術である「技術」ビザは実態として月18万円ボーナス無しで入管を通過しています。私は技術資格の契約書を3枚持っていますが、3社ともぴったり18万円です。これより専門性の低い特定技能と同等とされる日本人の待遇は年収200万円以下になるのではないでしょうか?
若くて安い外国人労働者が受入数上限もなく入ってくれば、非正規で働く日本の若者たちの賃金水準を引き下げ、少子化対策どころかいっそうの少子化を招きかねません。
以上
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