« 2022年11月 | トップページ | 2023年1月 »

2022年12月

技能実習制度の見直しについて(骨子)

技能実習制度の見直しについて(骨子)

外国人実習生SNS相談室 榑松佐一

①労働者としての受け入れと保護を

日本の私たちに必要な労働者であることをきちんと位置付けることが重要です。日本人に対しては正規と非正規の対等が義務付けられています。外国人に対する「日本人と同等の待遇」を「日本人の最低限と同等」にしないことが重要です。そのうえで、技能実習法にあるように日本語が不自由で日本での仕事や生活に不自由な労働者に対する保護の在り方を定めるべきだと思います。

②廃止しかないのか

「奴隷労働」「人権侵害」という情緒的な批判だけでなく、不正の種類と数量、産業別・地域別不正の実態など客観的な実態把握と機構の果たしている役割など具体的な問題個所を明らかにすべきです。そのうえで、制度の問題と体制など実態の問題を見直します。

また、雇う側も零細な事業者が多く、言葉も入管手続きも誰かに頼らなくては働き手を確保できません。ここが狙われています。失踪者にブローカーが近付いてくるのもこの理由があるからです。移籍の自由がないのは、受入れ事業者の義務とセットになっています。これは特定技能「支援」内容と比較するとよくわかります。

問題は不正があっても実習生が簡単に訴えられないことです。母国での莫大な手数料と借金があり強制帰国を心配します。会社の不正を訴えることができても監理団体が移籍先を見つけなければ帰国させられてしまいます。移籍の自由を認めただけで人権侵害がなくなるとは思えません。移籍の自由を認めるためには国がその保証をすべきです。
③手数料問題について

手数料については受け入れ機関が送り出し機関から入国時の手数料と借金の総額を報告させ、虚偽申告があった場合には受入れを停止するなどの二国間協定を結ぶ必要があります。また、これが受け入れ機関によるものであった場合には計画認定を取り消します。

 

④監理団体への罰則強化

実習期間の不正については実習生からの申告や定期検査で一定の処分が行われていますが、私の相談でも監理団体の指導が全くされておらず、明らかに監理団体の不手際で不正となっている事例が少なくありません。監理団体指導部は技能実習機構本部にあり、機構の地方事務所からの指導には限界があります。県をまたいで実習生を派遣する場合には都道府県労働局に届け出るなど監理団体への指導と罰則の強化が必要です。

⑤SNSでの相談受付が急務

実習生の大半が母国とビデオ会話ができるSNSを利用しています。機構には早急にSNSでの相談受付を行うことが求められます。そこでは相談だけでなく不正が疑われる場合には通訳も含めたチャットで必要な聞き取りや証拠提出を求めるようにするようにしてほしいと思います。不払い残業の写真や暴力・パワハラの動画を送ったりすれば1万件の相談のなかには不正申告の可能なものがかなりでてくると思います。

受け付けた相談を各分野の担当者、通訳の協力を得て、適切にふりわけていく必要があります。そのうえで必要な聞き取り、証拠の収集を行い申告に結びつけることが必要です。

⑥受入人数制限、機構の体制拡充と権限強化、ハローワーク登録

受け入れ国と受け入れ人数の制限を行い、国内では技能実習生の求人をハローワークに登録することします。「日本人と同等」の資料として実習計画に日本人の求人票を添付させます。現在でも外国人を雇用した場合には雇用届を出すことになっていますから、実習生の求人票をだすことは実務としても難しくないと思います。ハローワークは東海4県に約60カ所ありますから、機構1カ所とは大違いです。機構にはハローワークの職員もきていますから、情報の確認も容易です。

また、機構の専門性と権限を強化すべきです。数年で元の入管や労働局に戻ってしまうため、不慣れな職員も少なくありません。プロパーの職員養成と権限の強化を求めます。

⑦産業別雇用政策を

実習生の失踪者が多い建設業では暴力・暴言、労災の相談がたくさんあります。解体や産廃での職種違反も少なくありません。ここをどうするかが問われています。農業では個人事業主や労基法の適用除外があります。

建設業、農業、それに介護も含めていずれも日本人が来ない、来ても離職率が高い産業です。日本人が来ない、すぐにやめてしまう状況を放置して安い外国人労働力で済まそうという企業・産業では不正はなくなりません。

その産業に必要な労働者を日本人も含めてどう確保、育成していくのか、そこに外国人労働者にどう協力してもらうのかという産業雇用政策が必要です。

| | コメント (0)

出版報告会のお知らせ


下記報告会を開催することに致しました。お祝いメッセージをいただけると幸いです。
「コロナ禍の外国人実習生」 出版報告会
日時 2022年12月25日(日)15時より
会場 労働会館本館中会議室

2017年11月1日に外国人技能実習法が施行されて5年が経過しました。国は「施行後5年を目途に見直し」(同法附則)を行うため、有識者会議を設置し今月から議論が開始されました。
私は外国人実習生の相談活動を行っていますが昨年は92件126名の実習生からの相談をうけ、技能実習機構や関係当局に改善を求めてきました。2020年からはコロナ禍で新たな問題もおきてきました。また、特定技能に関わる相談も増えてきました。そこで技能実習法の見直しにむけてこれらの実態を整理し、意見をまとめ今回出版に至りました。この活動をJICAが事務局の「責任ある外国人労働者受入れプラットフォーム」JP-MIRAIで報告し先日優秀賞を頂きました。
報告会では出版に至る経過とともに、技能実習制度見直しに係る論点や議論の状況、また愛知県内での多文化共生の取り組みなど紹介したいと思います。

問い合わせ先 
Facebookページ「外国人実習生SNS相談室」
メッセンジャーまたはEmail:skurematsu@nifty.com

Photo_20221224090101

| | コメント (0)

明確に一方的な傷害を「喧嘩両成敗」

関東の大手スーパーチェーンSでの事件
相談者はベルトで殴られ出血、救急車で運ばれました。
1_20221211084101 298979507_479587653593133_31553006086280 Photo_20221211084101
会社は殴った実習生も左腕にアザがりましたが、これは殴ってくる相手の腕をつかんだのに、会社の担当者は「守るというのは相手をつかんではいけない」ので「喧嘩両成敗」としました。担当者は机をたたきながら「どちらが先に手を出したかは関係ない」「ケガの大小は関係ない」「あなたのように流血して病院にいき会社に迷惑をかけた」「懲戒か自主退職=途中帰国どちらにするか」という。
殴った実習生はすぐに自主退職を受入れ、会社は帰国させました。

相談者は目も殴られて外傷性散瞳症で後遺症が残ると診断。明らかに傷害行為だが会社の担当者は「警察に報告したら二人とも二度と日本で働けなくなる」として相談者が医療費の損害を求めることを認めませんでした。

12月9日に監理団体が来ましたが「機構に相談した。入管、警察沙汰になって犯罪を犯したことになった場合は軽度であっても基本的に罰となりビザに関わる」として特定技能でも入国できないと言いました。相談者がOTITn相談するという言うと「それならSに出社しない。寮も出てもらう。届けるので不法滞在になる」と言いました。
このような生活指導員と監理団体は技能実習制度に定める義務に反するため、技能実習機構に受け入れを辞めさせ、実習生の保護を求めました。

 

| | コメント (0)

責任ある外国人労働者受入れプラットフォーム(JP-MIRAI)で優秀賞

12月9日開催された「責任ある外国人労働者受入れプラットフォーム(JP-MIRAI)」総会で外国人実習生SNS相談室の活動が優秀賞となりました。総会後の公開フォーラムの第一部で表彰式が行われ、ZOOMで参加しました。

フォーラムにはJICA理事長、総理大臣補佐官、入管庁長官がお見えになり、その前で表彰されました。
JICAの田中明彦理事長は「外国人受け入れ制度の改定を検討する有識者会議」の座長に就いた方です。
221209
2212093

| | コメント (0)

« 2022年11月 | トップページ | 2023年1月 »