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2025年3月

建設業での失踪者について国交省の無策

技能実習制度から育成就労への変更にあたり、移籍の自由がないことが失踪の原因という議論が多かった。しかし、そこでは失踪者の半数を占める建設業の問題については全くと言っていいほど不十分だった。

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2015年に東北から実習生が逃げてきたことをはじめ、建設業での相談が続出した。これについて本村さんが2016年に国会で質問している国交省に質問
「失踪者は三〇・六四%が建設業にかかわる方々でございます。異常に失踪者が多いというのは明らかでございます。」
○石井国務大臣 外国人技能実習生の受け入れに係る制度の所管は法務省及び厚生労働省でございますので、国土交通省として、この点について見解を申し上げる立場にはございません。
このためその後も建設業での失踪が続出している(図は入管庁の資料から技能実習生の失踪の状況
建設業失踪者対策として国は下記を掲げているが効果は全くない
〇 月給制の導入による安定的な賃金の支払い
〇 建設キャリアアップシステムの登録義務化
〇 建設業許可を要件化受入人数枠の設定
〇 入管庁との間で失踪技能実習生に係る情報の共有・連携

これから8年経っても建設業・農業失踪者が減らないことについて2024年6月に二比総平さんが質問してくれた[技能実習法案]外国人労働者の使い捨ては許されない

二比総平さんは「法案でも、主務官庁、つまり法務、厚労には共有するってなっているんですけれども、農水や国交やそのほか経済産業などいろいろありますけど、共有するということにはなっていない。
そうすると、これまで技能実習で起こってきたように、何で失踪するのかの原因が分からない、まず前提としてそういう事態が起こっていること自体を現場が分からない。そうしたら、再発防止も図れないということになりませんか。大臣、共有すべきじゃありませんか。」

しかしそこでも国交省の答弁は変わっていない

国交省の説明
○政府参考人(蒔苗浩司君) お答え申し上げます。

建設分野におきましては、入管庁や業界団体等と連携して、事業協議会も活用し、技能実習生の失踪者数や失踪原因等の情報を共有するとともに、失踪防止対策に係る企業の取組等の普及啓発に努めています。
また、本年四月には、入管庁より失踪防止対策に係る三種類のリーフレットを周知するよう依頼があったことを踏まえて、建設業関係団体等に速やかに周知を行ったところでございます。
育成就労制度における対応につきましては、今後、制度所管官庁である入管庁等とも連携しながら検討してまいります。

農水省はこんなに失踪しているのに「把握している案件はわずか」
○政府参考人(勝野美江君 )失踪理由につきましては、明確に特定することが困難な面もありますけれども、実習実施者の不適切な取扱いのほか、技能実習生側の事情によるものもあるというふうに聞いております。

なかなか、現時点で把握している案件というのが少数にとどまっておりますので、この失踪に係る情報の把握、失踪防止に向けた取組について、更にどのような対応が可能か検討してまいりたいというふうに考えております。


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実際は大手介護施設のため 外国人訪問介護解禁

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国は実習生に続き特定技能外国人も訪問介護にいかせるとしました。昨年の「まさかの訪問介護報酬引き下げ」を改善しないで安い労働者受け入れで大手施設を儲けさせるためです。これでは居宅訪問事業所の倒産は止まりません。

パブコメを提出しました。

「出入国管理及び難民認定法第七条第一項第二号の基準を定める省令及び特定技能雇用契約及び一号特定技能外国人支援計画の基準等を定める省令の規定に基づき介護分野について特定の産業上の分野に特有の事情に鑑みて当該分野を所管する関係行政機関の長が定める基準の一部を改正する件(案)に関する意見」

2025年3月19日
外国人実習生相談室
榑松佐一

当方は2007年から外国人研修生の相談を受けその後さまざまな在留資格の外国人労働者からSNSで相談を受けています。また6年前から介護職についており、今回の「改正」について訪問介護の現場から声を出させていただきます。

(1)「まさかの訪問介護報酬引き下げ」とセットであること
昨年の介護報酬改定では訪問介護の利益率が7.8%と高いことを理由に訪問介護報酬が2%引き下げられました。しかし給付部会に提出された資料をみると訪問回数ごとの事業所利益率はマイナス10%からプラス10%と広がっていました。大きな施設の部屋をまわる訪問は1日10件も訪問できるのに対し、地域をまわる居宅訪問では1日4軒程度が普通で、4割近くが赤字です。国はこれを平均して利益率が高いと言っていました。引き下げの結果、居宅訪問事業所の倒産と休業・廃業が相次いでいます。
 今回の「概要」をみると一定期間の介護就労経験を要することから、施設介護を経験した特定技能外国人が初任者研修をうけて訪問介護に従事することになっています。実際には特定技能を受け入れる施設を持つ法人がサ高住などの施設への訪問介護に特定技能外国人を使うことができます。これまでも高い利益率だった施設訪問事業者が下がった利益を回復させるためだと思われます。訪問介護報酬を下げたまま安い特定技能外国人を拡大すれば、日本人介護労働者の賃金は上がらず、ますます減り続けます。

(2)訪問介護と施設介護の違い
  国は 「訪問介護は介護の一部であり、移転すべき技能もかわらない」「介護の業務が基本的には共通であることを前提にお話を進めていただきたい」(技能実習専門家会議)という姿勢ですが、訪問介護と施設介護、施設訪問と居宅訪問は全く違います。
訪問介護は利用者宅で「1対1」対応となります。特定技能介護、技能実習介護が始まったときには訪問介護は除外されていました。介護福祉士資格をもつ「介護」やEPA「介護」でも多くが施設での就労でした。
第118回社会保障審議会介護保険部会のなかでも認知症家族の会から「在宅介護の維持には外国人労働者の応援も必要だと理解を示しつつ、そもそもホームヘルパーが低賃金なのに国が抜本対策を取らなかったことが原因」「認知症の人とのコミュニケーションは日本人でもさまざまな困難がある。利用者家族としては、外国の方がどれだけ日本の生活様式や認知症ケアに習熟しているか不安がつきまとう」と指摘されています。
(3)必要とされる日本語能力 
 私はこの間、ベトナム、カンボジア、ミャンマー、フィリピンの介護研修施設を訪問調査してきました。特定技能試験を合格した方でも日本語能力は高くありませんでした。それでも高齢者に対する態度は親切なので、施設で要介護度が高く、あまり会話を必要としない身体介護なら可能です。利用者対応や引継ぎなどわからないときにも、施設なら日本人に聞くことができます。しかし、訪問の場合には介護度も様々でいろいろ言われ、家族との対応を求められることがあります。
私の事業所でも毎日のように利用者宅でのトラブルが指摘されています。留守、突然のキャンセル、ヘルパーさんに対するセクハラで支援を打ち切ったこともあります。支援計画に入っていない手伝い、家族と共用部分の掃除など様々な要望がだされ、ヘルパーが変ったあとで問題となることもあります。
 軽い認知症の利用者や、女性に対して乱暴な言い方をする利用者さんもいます。「財布がなくなった」「○○がこわれていた」などのトラブルも少なくありません。これらに対して専門家会議の議論は「認知症の理解については介護職員初任者研修で行っている」など日本人と同程度の内容です。OJT・一定期間の同行に加え,ICT、見守りカメラの活用など現在の利用実態がどうなのか説明はなく、極めて機械的な答弁に終始しています。しかし「概要」を見る限り日本語能力基準、事前職務経験、同行期間など具体的でなく事業者まかせになっています。日本語能力は最低でもN3とすべきです。
(4)失踪予防対策
毎年、9千人もの実習生が失踪し、なかでも建設・農業など言葉での作業指示が多い産業で失踪が多くなっています。口頭での引継ぎなど日本人職員とのトラブルが少なくありません。日本人職員の退職者が多い職場では外国人からのトラブル相談があります。受入れ施設基準に日本人の離職率を入れるべきです。

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訪問介護解禁にパブコメ

介護技能実習生に訪問介護を解禁する基準改正についてパブコメ(3/18〆切)を提出しました。484094678_9405123712898734_5458921541448
さらに特定技能でも訪問介護を閣議決定し、パブコメが始まっています。

「介護職種について外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律施行規則に規定する特定の職種及び作業に特有の事情に鑑みて事業所管大臣が定める基準等の一部を改正する件(案)に関する意見」
2025年3月12日
外国人実習生SNS相談室
榑松佐一
当方は2007年から外国人研修生・実習生の相談を受け、その都度当局に代理人申告・情報提供をさせてもらっています。また6年前から介護職についており、今回の「改正」について訪問介護現場からの声を出させていただきます。
(1)「まさかの訪問介護報酬引き下げ」とセットであること
 今回の技能実習生訪問介護解禁は昨年6月の「外国人介護人材の業務の在りかたに関する検討会中間まとめ」を具体化したものです。国は昨年4月から訪問介護報酬を2%引き下げており同時期に議論されてきたものです。厚労省は引き下げの理由として介護事業所全体では利益率が低いなか、訪問介護事業所は7.8%と高い利益率となっているとしました。しかし厚労省の資料では訪問回数の多い事業所が10%以上の利益率となっているいっぽうで、4割の訪問介護事業所が赤字になっていました。サ高住など大きな施設に隣接した訪問介護事業所は1日に10件もの訪問が可能だからです。今回の引き下げで地域の居宅介護訪問介護事業所の倒産・廃業が急増しています。
「概要」をみると、一定期間の介護就労経験を要することから、施設介護を行っている法人を対象にしたものであることがわかります。訪問介護報酬を引き下げたままで、大手施設訪問事業者に安い外国人労働者の活用を可能とするためのものだということはあきらかです。訪問介護報酬が下げられたまま、外国人実習生を拡大すれば日本人の賃金は上がらず、居宅訪問は日本人介護労働者は減ってしまいます。
(2)様々な疑念の声を無視
 施設と違い訪問介護は利用者宅で「1対1」対応となります。特定技能介護、技能実習介護が始まったときには訪問介護は除外されていました。介護福祉士資格をもつ「介護」やEPA「介護」でも多くが施設での就労でした。今回専門家会議のなかでは様々な質問が出されました。しかし、国側の回答は極めて形式的なものばかりでした。例えば
①送り出し国での訪問介護
「送り出し国において訪問介護についてどの程度のニーズがあるのか」
→「訪問介護は介護の一部であり、移転すべき技能もかわらない」「介護の業務が基本的には共通であることを前提にお話を進めていただきたい」というスタンスでの議論でした。送り出し国のニーズについて多くの疑問・意見がだされましたがごく一部の例示だけで「海外ニーズの議論は尽きている」と打ち切っています。
私はこの間、ベトナム、カンボジア、ミャンマー、フィリピンの介護研修施設を訪問調査してきましたが、海外では家族介護が大半で老人ホームや家事労働者の使用は一部裕福な世帯に限られていました。ケアギバー、家事使用人で住み込みもしくは1軒を訪問して朝食から夕食まで家事、洗濯、子どもとお年寄りの世話をするというものでした。
 技能実習制度は前職経験を前提としているのですから、受け入れ国を決める際に、これらの実態をきちんと調査する必要があります。
②パワハラ・カスハラ対策
私の事業所でも毎日のように利用者宅でのトラブルが指摘されています。留守、突然のキャンセル、ヘルパーさんに対するセクハラで支援を打ち切ったこともあります。支援計画に入っていない手伝い、家族と共用部分の掃除など様々な要望がだされ、ヘルパーが変ったあとで問題となることもあります。
 比較的要介護度の高い施設では少ないかもしれませんが、介護度が低く、いっぽうで軽い認知症の利用者や女性に対して乱暴な言い方をする方もいます。また「財布がなくなった」「○○がこわれていた」などのトラブルも少なくありません。
 これらに対して専門家会議の議論は「認知症の理解については介護職員初任者研修で行っている」など日本人と同程度の内容です。OJT・一定期間の同行に加え,ICT、見守りカメラの活用など現在の利用実態がどうなのか説明はなく、極めて機械的な答弁に終始しています。
③失踪予防対策
毎年、9千人もの実習生が失踪していますが、なかでも建設・農業など言葉での作業指示が多い産業で失踪が多くなっています。
 施設介護では介護度が高い利用者が多くオムツ交換や食事の世話など、頻繁で利用者とあまり話さなくても作業に慣れることができます。外国人を夜勤体制の補助に使う事業所が多く、口頭での引継ぎなど日本人職員とのトラブルが少なくありません。日本人職員の退職者が多い職場では外国人からのトラブル相談があります。
実習生失踪の原因としては(1) 実習内容と契約の不一致、(2) 過度な労働、(3) 職場内のハラスメント、(4) コミュニケーション不足が指摘されています。訪問介護でも同様です。
しかし「概要」を見る限り日本語能力基準、事前職務経験、同行期間など具体的でなく事業者まかせになっています。日本語能力は最低でもN3とし、受入れ施設基準に日本人の離職率を入れる。離職率が高い事業所は外すべきです。
以上

 

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