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実際は大手介護施設のため 外国人訪問介護解禁

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国は実習生に続き特定技能外国人も訪問介護にいかせるとしました。昨年の「まさかの訪問介護報酬引き下げ」を改善しないで安い労働者受け入れで大手施設を儲けさせるためです。これでは居宅訪問事業所の倒産は止まりません。

パブコメを提出しました。

「出入国管理及び難民認定法第七条第一項第二号の基準を定める省令及び特定技能雇用契約及び一号特定技能外国人支援計画の基準等を定める省令の規定に基づき介護分野について特定の産業上の分野に特有の事情に鑑みて当該分野を所管する関係行政機関の長が定める基準の一部を改正する件(案)に関する意見」

2025年3月19日
外国人実習生相談室
榑松佐一

当方は2007年から外国人研修生の相談を受けその後さまざまな在留資格の外国人労働者からSNSで相談を受けています。また6年前から介護職についており、今回の「改正」について訪問介護の現場から声を出させていただきます。

(1)「まさかの訪問介護報酬引き下げ」とセットであること
昨年の介護報酬改定では訪問介護の利益率が7.8%と高いことを理由に訪問介護報酬が2%引き下げられました。しかし給付部会に提出された資料をみると訪問回数ごとの事業所利益率はマイナス10%からプラス10%と広がっていました。大きな施設の部屋をまわる訪問は1日10件も訪問できるのに対し、地域をまわる居宅訪問では1日4軒程度が普通で、4割近くが赤字です。国はこれを平均して利益率が高いと言っていました。引き下げの結果、居宅訪問事業所の倒産と休業・廃業が相次いでいます。
 今回の「概要」をみると一定期間の介護就労経験を要することから、施設介護を経験した特定技能外国人が初任者研修をうけて訪問介護に従事することになっています。実際には特定技能を受け入れる施設を持つ法人がサ高住などの施設への訪問介護に特定技能外国人を使うことができます。これまでも高い利益率だった施設訪問事業者が下がった利益を回復させるためだと思われます。訪問介護報酬を下げたまま安い特定技能外国人を拡大すれば、日本人介護労働者の賃金は上がらず、ますます減り続けます。

(2)訪問介護と施設介護の違い
  国は 「訪問介護は介護の一部であり、移転すべき技能もかわらない」「介護の業務が基本的には共通であることを前提にお話を進めていただきたい」(技能実習専門家会議)という姿勢ですが、訪問介護と施設介護、施設訪問と居宅訪問は全く違います。
訪問介護は利用者宅で「1対1」対応となります。特定技能介護、技能実習介護が始まったときには訪問介護は除外されていました。介護福祉士資格をもつ「介護」やEPA「介護」でも多くが施設での就労でした。
第118回社会保障審議会介護保険部会のなかでも認知症家族の会から「在宅介護の維持には外国人労働者の応援も必要だと理解を示しつつ、そもそもホームヘルパーが低賃金なのに国が抜本対策を取らなかったことが原因」「認知症の人とのコミュニケーションは日本人でもさまざまな困難がある。利用者家族としては、外国の方がどれだけ日本の生活様式や認知症ケアに習熟しているか不安がつきまとう」と指摘されています。
(3)必要とされる日本語能力 
 私はこの間、ベトナム、カンボジア、ミャンマー、フィリピンの介護研修施設を訪問調査してきました。特定技能試験を合格した方でも日本語能力は高くありませんでした。それでも高齢者に対する態度は親切なので、施設で要介護度が高く、あまり会話を必要としない身体介護なら可能です。利用者対応や引継ぎなどわからないときにも、施設なら日本人に聞くことができます。しかし、訪問の場合には介護度も様々でいろいろ言われ、家族との対応を求められることがあります。
私の事業所でも毎日のように利用者宅でのトラブルが指摘されています。留守、突然のキャンセル、ヘルパーさんに対するセクハラで支援を打ち切ったこともあります。支援計画に入っていない手伝い、家族と共用部分の掃除など様々な要望がだされ、ヘルパーが変ったあとで問題となることもあります。
 軽い認知症の利用者や、女性に対して乱暴な言い方をする利用者さんもいます。「財布がなくなった」「○○がこわれていた」などのトラブルも少なくありません。これらに対して専門家会議の議論は「認知症の理解については介護職員初任者研修で行っている」など日本人と同程度の内容です。OJT・一定期間の同行に加え,ICT、見守りカメラの活用など現在の利用実態がどうなのか説明はなく、極めて機械的な答弁に終始しています。しかし「概要」を見る限り日本語能力基準、事前職務経験、同行期間など具体的でなく事業者まかせになっています。日本語能力は最低でもN3とすべきです。
(4)失踪予防対策
毎年、9千人もの実習生が失踪し、なかでも建設・農業など言葉での作業指示が多い産業で失踪が多くなっています。口頭での引継ぎなど日本人職員とのトラブルが少なくありません。日本人職員の退職者が多い職場では外国人からのトラブル相談があります。受入れ施設基準に日本人の離職率を入れるべきです。

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