建設業対策は急務
技能実習制度の問題点として失踪が挙げられています。
確かに不正や問題があっても移籍できないこと、高額な借金が残っていて帰られないため逃げることが多くなっています。
しかし、同じく失踪でも産業別に大きな違いがあります。
建設業の失踪率を他産業並みの10%にできれば失踪者数は40%減ります。
国は建設業に特別な要請をしています。
建設業における技能実習制度の適正な運営の推進について(要請)令和5年4月4日
技能実習制度の問題点として失踪が挙げられています。
確かに不正や問題があっても移籍できないこと、高額な借金が残っていて帰られないため逃げることが多くなっています。
しかし、同じく失踪でも産業別に大きな違いがあります。
建設業の失踪率を他産業並みの10%にできれば失踪者数は40%減ります。
国は建設業に特別な要請をしています。
建設業における技能実習制度の適正な運営の推進について(要請)令和5年4月4日
技能実習制度と特定技能の見直しを行う有識者会議が始まりました。先日は日弁連主催のシンポジウムも開催されました。
第二回有識者会議の資料が公開されています。
各団体のヒヤリングはとてもリアルで、最新の実態がよくわかります。単純な実習制度廃止論や移籍の自由化という意見は多くありません。
為替格差による短期間の出稼ぎを希望する外国人も少なくないなか、長期滞在や家族滞在についても必ずしも希望が多いわけではありません。
特定技能に問題がたくさんある事、このままではいかないことがよくわかります。
論点はまだ入口だけで、あまりよくわかりません。
https://www.moj.go.jp/isa/policies/policies/03_00056.html
「マイグラント研究会」は、労働事件・外国人事件に取り組む弁護士、労働組合関係者、外国人労働者の問題に詳しい研究者やNPO関係者などで作る団体です。
各言語のFBページです。
日本語
https://www.facebook.com/profile.php?id=100057072325610
中国語
https://www.facebook.com/profile.php?id=100057266747099
ベトナム語
https://www.facebook.com/profile.php?id=100063708994691
タガログ語
https://www.facebook.com/profile.php?id=100075945037430
技能実習法施行5年の見直し時期に合わせて「コロナ禍の外国人実習生」(風媒社1,600円+税)を出版しました。
技能実習制度にはさまざまな問題がありますが、特定技能には申告権もなくブローカーの規制もほとんどできません。
すでに特定技能の相談も増えています。
11月2日に法務省・厚労省要請を行ったあと記者会見を行います。
愛媛県で8人の実習生が不払い賃金を訴えました。
2022/10/08(土) 21:25
9月、実習生がNPO法人「日越ともいき支援会」(東京)に賃金未払いを相談。同法人から通報を受けた外国人技能実習機構や労働基準監督署が、行政処分も視野に調査を進めている。
「外国人実習生SNS相談室」(風媒社2017年)に岐阜アパレル問題を書きましたが、国会でも追及し2017年には経産省が工賃調査を行いました。
業界では次々と行動指針を出していますが、実態は変わっていません。
岐阜労働局は毎年「外国人技能実習生を雇用する事業場に対する監督指導結果」を公表してきましたが、縫製業は全然改善されていません。今回の愛媛の事件も同じ状況だと思われます。例年この時期に前年度の調査結果が公表されてきましたが、今年は「公表予定は決まっていない」そうです。職種別データは少なく、全国でもとても貴重なデータです。ぜひ、厚労省として公表をお願いしたい。
技能実習法が11月で施行5年となり附則で見直しが予定されています。古川前法相が何度も見直し発言を行い、自民党が外国人労働者等特別委員会要望を提出しました。秋の臨時国会で入管法改正案が出ると言われており、そのなかでも取り上げられると思います。
「奴隷労働」「人権侵害」の理由として「技能移転の趣旨と違う」「移籍の自由がない」が挙げられていますが、情緒的な論調が多く、数量、定性的な分析はない。どのような不正の種類と産業別内訳、どの地域で多いのか、制度のどこがどういう問題を起こしているのか、機構の実態はどうかなどの指摘はありません。
技能実習法に実習生の申告権ができて5年、だれでも代理人になることができる。年間7千人もの失踪者が出ているのに、申告件数は年間100件程度。数万もの相談がどうして申告に結びつかないのか、奴隷労働だと問題を指摘する人達はなぜ申告しないのか。機構や入管、労働局はいまだにメールもSNSも使えない。デジタル庁はお上の都合でしか使えないのか。
この間、年間100件以上の相談をうけてきた経過から、実習制度の問題点をまとめてみた。
全文は9月に予定する新著に書いてあるが、自民党風に要旨をまとめると以下のようになる。
秋の議論にむけて、皆さんからの意見をお願いしたい。
>Email:kurematsu@airoren.gr.jp
技能実習制度の見直しについて(骨子案)
①労働者としての受け入れと保護を
日本の私たちに必要な労働者であることをきちんと位置付けることが重要です。日本人に対しては正規と非正規の対等が義務付けられています。外国人に対する「日本人と同等の待遇」を「日本人の最低限と同等」にしないことが重要です。そのうえで、技能実習法にあるように日本語が不自由で日本での仕事や生活に不自由な労働者に対する保護の在り方を定めるべきだと思います。
②廃止しかないのか
「奴隷労働」「人権侵害」という情緒的な批判だけでなく、不正の種類と数量、産業別・地域別不正の実態など客観的な実態把握と機構の果たしている役割など具体的な問題個所を明らかにすべきです。そのうえで、制度の問題と体制など実態の問題を見直します。
また、雇う側も零細な事業者が多く、言葉も入管手続きも誰かに頼らなくては働き手を確保できません。ここが狙われています。失踪者にブローカーが近付いてくるのもこの理由があるからです。移籍の自由がないのは、受入れ事業者の義務とセットになっています。これは特定技能「支援」内容と比較するとよくわかります。
問題は不正があっても実習生が簡単に訴えられないことです。母国での莫大な手数料と借金があり強制帰国を心配します。会社の不正を訴えることができても監理団体が移籍先を見つけなければ帰国させられてしまいます。移籍の自由を認めただけで人権侵害がなくなるとは思えません。移籍の自由を認めるためには国がその保証をすべきです。
③手数料問題について
手数料については受け入れ機関が送り出し機関から入国時の手数料と借金の総額を報告させ、虚偽申告があった場合には受入れを停止するなどの二国間協定を結ぶ必要があります。また、これが受け入れ機関によるものであった場合には計画認定を取り消します。
④監理団体への罰則強化
実習期間の不正については実習生からの申告や定期検査で一定の処分が行われていますが、私の相談でも監理団体の指導が全くされておらず、明らかに監理団体の不手際で不正となっている事例が少なくありません。監理団体指導部は技能実習機構本部にあり、機構の地方事務所からの指導には限界があります。県をまたいで実習生を派遣する場合には都道府県労働局に届け出るなど監理団体への指導と罰則の強化が必要です。
⑤SNSでの相談受付が急務
実習生の大半が母国とビデオ会話ができるSNSを利用しています。機構には早急にSNSでの相談受付を行うことが求められます。そこでは相談だけでなく不正が疑われる場合には通訳も含めたチャットで必要な聞き取りや証拠提出を求めるようにするようにしてほしいと思います。不払い残業の写真や暴力・パワハラの動画を送ったりすれば1万件の相談のなかには不正申告の可能なものがかなりでてくると思います。
受け付けた相談を各分野の担当者、通訳の協力を得て、適切にふりわけていく必要があります。そのうえで必要な聞き取り、証拠の収集を行い申告に結びつけることが必要です。
⑥機構の体制拡充と権限強化、ハローワークへの登録を
受け入れ国と受け入れ人数の制限を行い、国内では技能実習生の求人をハローワークに登録することします。「日本人と同等」の資料として実習計画に日本人の求人票を添付させます。現在でも外国人を雇用した場合には雇用届を出すことになっていますから、実習生の求人票をだすことは実務としても難しくないと思います。ハローワークは東海4県に約60カ所ありますから、機構1カ所とは大違いです。機構にはハローワークの職員もきていますから、情報の確認も容易です。
また、機構の専門性と権限を強化すべきです。数年で元の入管や労働局に戻ってしまうため、不慣れな職員も少なくありません。プロパーの職員養成と権限の強化を求めます。
⑦産業別雇用政策を
実習生の失踪者が多い建設業では暴力・暴言、労災の相談がたくさんあります。解体や産廃での職種違反も少なくありません。ここをどうするかが問われています。農業では個人事業主や労基法の適用除外があります。
建設業、農業、それに介護も含めていずれも日本人が来ない、来ても離職率が高い産業です。日本人が来ない、すぐにやめてしまう状況を放置して安い外国人労働力で済まそうという企業・産業では不正はなくなりません。
その産業に必要な労働者を日本人も含めてどう確保、育成していくのか、そこに外国人労働者にどう協力してもらうのかという産業雇用政策が必要です。
実習生が妊娠や病気など自己都合で帰国する場合にクミアイが飛行機代をだしてくれないという相談がありました。
これについても技能実習運用要領で受け入れ機関が全額支払うことになっています。
運用要領p87
帰国事由が技能実習生の自己都合による場合について
企業単独型実習実施者又は監理団体が負担すべき帰国旅費については、帰国事由を限定していません。帰国事由が技能実習生の自己都合による場合であっても、帰国旅費の負担が企業単独型実習実施者又は監理団体によってされていない場合には、本号に適合
しないこととなります。
これは、技能実習生と企業単独型実習実施者又は監理団体との間で「自己都合」に関して解釈に争いが生じ、結果として、技能実習生の帰国に支障を来すことを防ぐためです。
210801 第4章 (otit.go.jp)