愛労連は7月23日、下記のパブコメを法務省に提出しました。
私は愛知県で労働団体の役員をしています。その中には外国人からの相談も少なくありません。日々の労働相談の実態から出入国管理基本計画案に意見を申し上げます。
Ⅲ出入国管理行政の主要な課題と今後の方針
「1 我が国経済社会に活力をもたらす外国人の円滑な受入れ」について
私は外国人とのコミュニケーションが不慣れな日本人にとって、働く場で外国人との交流ができれば多文化共生にも良い事だと考えます。今後高齢化社会を迎える日本にとって労働力の不足を助けてもらう事はありうると思います。しかしその場しのぎで受入れる分野を決めるだけで、見通しを持った人数基準を作らず、不用になったら追い返すようなやり方では経済社会に活力にならないと思います。現在、技能実習生や技術者、留学生の各分野で入国者が増えていますが、とても管理されているとは思えません。管理レベルを超えた受入れは逆に混乱を招き、国内の労働レベルを引き下げ、活力を失いかねません。まず、全ての分野で数量制限を導入すべきです。
3 新たな技能実習制度の構築に向けた取組
(2)今後の方針
「ア 技能実習制度の適正化のための措置に」ついて
今国会に提出された「技能実習生の保護に関する」法案では、新たな監督機関を設置することと、外国人実習生に申告権を付与する点は評価できます。しかし以下の点を放置したままでは適正化の実効性に疑問があります。
①営利を目的とする企業が実習生をあっせんしたり、監理を行うことは現在の「指針」でも禁止されています。しかし監理団体が営利企業に業務を委託することについて厳密な規定がありません。愛労連が2012年に名古屋入管に情報提供した事件では派遣会社(株)ITCの社長が業務委託を受けた監理団体の専務を名乗ってあっせん、入国手続き、強制帰国の切符手配、不払い賃金の是正、帰国してからの寮の清掃費用の請求を行っていました。しかし当時の統括は「ブローカーには罰則がない」との理由で派遣会社の呼び出しは行わず、名義上の監理団体しか呼び出しませんでした。名古屋入管は「監理団体の指導の下であれば監理を委託することができる」としています。これでは処分されるのは書類上の団体だけです。監理の業務委託は禁止し、ブローカーに対する罰則をつくる必要があります。
②建前上「技能移転」を掲げているため、通常の労働行政による職業紹介、監督行政とは別の機構をつくることになっています。その費用は手数料など受入れ企業の負担によるところとなり、受入中小企業の負担は小さくありません。これが家賃上乗せなどの不正なピンハネの一因となっています。すでに「技能実習生より費用が安い」と外国人を売り込む紹介業者の宣伝が出回っています。なかには実習生を失踪させ「管理費のかかる技能実習生より安い」と企業に売り込むものもいます。
新たに設置される機構による受入れ機関への監督は1年に一回程度と言われており実効性に疑問があります。しかも実習生の受入総数に制限がないために、急増する受入れ人数に対応できずさらに規模を肥大化させかねません。
「イ 制度本来の目的を踏まえた制度の拡充にかかる見直し」について
制度本来の目的はすでに大半が形骸化しています。私が相談を受けた事例ではベトナムのエアコン工場で溶接をしていた労働者が、経歴を建設会社、経験職種を鉄筋施工と偽装され、鳥取県の建設会社から東北の建設現場に派遣されていました。しかしベトナムでは建築基準法が日本と異なり、彼の出身地であるホーチミンでは鉄筋施工の仕事はほとんどありません。本人は母国に帰って鉄筋工となる見込みが全くなく、東北で人手不足の建設作業員に安い外国人を売り込む業者がピンハネ目的で受入をしていました。
異業種協同組合では本来の技能移転に責任を持って受入れることはできません。制度本来の目的を踏まえるのであれば、各省が各送り出し国の実情を踏まえて受入れ業種を定め、受入団体・企業を許可すべきです。
(2)今後の方針
「ア 在留管理制度の的確な運用及びその見直し」について
何より、受入れ外国人労働者の増加に応じた入管体制の拡充が求められます。就労ビザや技能実習生だけでなく、急増する留学生による就労も大きく増えていますがこれらの実態はほとんど掌握されていません。各県の入管支部には技能実習制度を担当する在留審査課が無いため、そこでは技能実習での不正について対応ができません。
新法では実習生からの申告を労働基準監督署が受け付ける事になっていますが、外出や休暇を制限する事業者があるなかでは時間外や休日での対応窓口も求められます。近年送り出し国数も増加しており各国言語への対応も必要です。
6 安心・安全な社会の・・・不法滞在者対策等の推進
「(1)課題等」について
このなかでもふれられていますが不法残留者は平成5年に比べて80%も減っています。にも関わらず不法滞在者対策を強化するために費用をかけ、罰則を強化する理由はありません。
現在提出されている入管法改正案では「活動を行っておらず、かつ、他の活動を行い又は行おうと在留していること(正当な理由がある場合を除く)」が認められた場合、「在留資格を取り消すことができる」としなっています。しかし不正を行う会社や監理団体は事件が発覚しないように実習生を強制帰国させることが少なくありません。このような機関から逃げた実習生が直ちに在留資格を失うことになれば「正当な理由」を証明する事は極めて困難となります。少なくとも一定期間については在留期間を保証するべきです。
外国人への罰則を強化するだけでなく、むしろ技能実習制度に不正に介在したり、不法就労を助長する日本の派遣会社、職業紹介会社などのブローカーに対する罰則を強化する方がより効果があると思います。
2015年7月23日
名古屋市熱田区沢下町9-7労働会館東館
愛知県労働組合総連合
議長 榑松佐一
Tel 052(871)5433 FAX 052(871)5618